遊技租界 『佐渡屋太郎のパチンコ商売道日記』

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圧巻の背割桜と経営者の哲学的思索【佐渡屋太郎-vol.279】

木津川の堤防沿いに1.4kmにわたって続く“背割桜”の並木道

いまは13年4月16日(月)の18時05分。今日は1日中忙しく動き回り、今やっと机の前に落ち着いている。午前中から昼に掛けては、原稿の請求書の発送など事務手続きのため、街まで歩いて行ってきた。今日は晴天で京都の気温は27℃。少し暑いくらいの陽気だった。帰って来てからはベランダで、挿し木の植え付けや今まで溜まっていた植え替え、さらに鉢の整理に没頭した。その途中で暑さのためか動きすぎたせいか、頭がクラクラしてきた。いま酒の混ざった氷水を飲み、濃度の増した血液を薄めているところだ。

今日の個人的なニュースは、前にこのブログでも少し書いたカジノ雑誌が本格的に動き出し、来月にマカオへの取材依頼があったことだ。いよいよ腕の見せどころがやってきたというべきか。このところ地味な取材が続いていただけに、また“アジアの熱気”に接しられることが嬉しい。こんなことがあったので、今日の酒は格別にうまい。いま窓を開け放ち、涼しい夜風に当たりながら、放浪癖がまた疼きだしてマカオの夜の風景を妄想している。このブログでも、面白いレポートを書けるのではないかと、いまからワクワクしている佐渡屋太郎である。

さて、このところ書いておかねばならないことが山積している。ただ、それらは個人的なことであるので、パチンコのことを織り交ぜながら、さりげなく行動記録を差し込んでいきたいと思っている。まず今回は4月1日(月)に行ってきた花見のことだ。昨年、目を付けておいた京都府八幡市にある“背割堤”へ、Y嬢とその母親を連れて行ってきた。一応、3月31日までに原稿をすべて書き、2時間ほど寝ただけでの出発となった。本来なら、酒を飲みながら肉を焼き、豚汁を作り、食後にコーヒーを味わうというのが、これまでのY嬢との花見の定番であった。

堤防の入口で咲き乱れる八重のしだれ桜

しかし、今年はY嬢母を連れて行くので、事情は異なった。Y家については次回に詳しく書くが、Y嬢母もY嬢父も軽い認知症に罹っている。私たちが1年半前、Y嬢の実家のある枚方の近くに引っ越して来たのも、そうした事情があったからだ。園芸好きのY嬢母は花見に行くと言ったら、「私も行きたい」というので連れて行くことにしたのだ。一方、Y嬢父の関心は碁や相撲や高校野球で、園芸はもとより花や植物には全く関心がないので、留守番をすることになった。当日はY嬢母を連れて行ったので、お菓子やお茶やコーヒーを持っての健全な花見になってしまった。ただ、佐渡屋太郎はペットボトルに酒を入れて隠し持っていった。酒を飲まない花見など私にとってはありえない。

しかし、今年は絶好の花見時(はなみどき)であり、格好の花見日和(はなみびより)であった。人で混み合う土日を避けて、月曜に花見ができるのもフリーになった特典だろう。少し待つと市営の駐車場にも車を入れることができた。土日なら特設の駐車場に入れるのも難しい。徹夜明けではあったが、何とも爽快な“花見2013”となった。“背割堤”というのは、並行して流れる木津川と宇治川の間にある堤防のことを言う。その堤防の1.4kmにソメイヨシノ250本が植えられ、桜の花道が作られているのである。これを地元の人々は“背割桜”と呼んでいる。私が見る限り、この八幡界隈では最高の花見どころである。

月曜日にも関わらず、堤防の花道には多くの人で溢れていた。ちなみに写真の左側に木津川、右側に宇治川が流れている

今年はまずY嬢とY嬢母と一緒に、桜の下にキャンプ用の椅子を出して花を愛でた。その間、佐渡屋太郎はペットボトルに詰めた酒を飲みながら、体全体で春の陽を受けて日干しをした。何と幸せなことか。風景全体がピンク色に染まっている。あと何回、こんな花見ができることだろうか。いつも花見をするときは、こんなことを考えてしまう。“少年老い易く、学成りがたし”である。私の目標達成は、いよいよ余命との競争になってきたようだ。ただこの1年、少しずつではあるが、着々と進んでいることが僅かながらの慰めと言えるだろうか。

果たして、この世に満足して死ねるひとが一体、どれくらいいるのだろうか。人それぞれに使命というものがあり、目標レベルも異なるから、その当事者にしか分からない問題ではある。ただ個人的には、死ぬ直前までその目標と格闘していたいと思っている。そんなことを考えていて、思い出したのがダイナムジャパンホールディングスの佐藤社長のことだ。これでやっと今回のテーマに辿り着くことができた。佐藤社長は若い頃から哲学的な思索を続けてきた人であり、個人的にはその思索内容に興味を持ってきた。さらに、以前にもこのブロクでも書いたが、その1つの結晶が「ワンアジア財団」であり、その活動方針に共感も覚えた。

先に、『国を越えて!ダイナムの挑戦』(『財界』編集部編著、財界研究所刊、2012年)を読んだとき、その思索の断片を見ることができた。しかし質問の突っ込みが弱いため、その真髄には達することができなかった。だから、読んでからずっと欲求不満の状態にある。しかし、今回の香港上場というある意味での目標の達成には、その思索やそこから生み出された独自の哲学、さらに「ワンアジア」の活動が大きな布石となり、後押しをしてくれたのだと私は思っている。そして、後から考えれば、香港上場はいかにも佐藤社長らしい方法であり、これは成るべくして成った当然の帰結のようにも思えてくる。

堤防をすっぽりと包み込むように枝を張る桜の木々

では、前著を元にしてその思索の過程を辿ってみることにしよう。まず、その端緒として、次のような言葉がある。「敢えて言うと、自分が高校生時代から半世紀に渡って追い求めてきたこと、自己とは何か、人間とは何かといった難しい問題なのですが、そういったことを、いろんな人との出会いの中で、わたしなりに掘り下げてきました。人類の未来は意外と悲観ではなくて、夢と希望が持てるものではないか、というふうにポジティブに考えているのです」というものだ。これは哲学の基本的な問題であり、永遠のテーマでもある。

氏はこれまでに様々な人との出会いがあった。私が知っているだけでも故中村天風氏や故渥美俊一などが挙げられる。だいぶ前には、パチンコ業界誌になかなか常人には理解できないような宇宙の成り立ちなどを語ったこともあった。さらに97年には、知人からの紹介で、「仙人」と出会ったという。その人は「根本的なテーマは4つあると語った。自我とは何か、人間とは何か、生命とは何か、そして実体とは何か。4つの根本命題は過去と現在、未来に渡っての重要な命題だとも言うのである」。その経験は、氏にとって後に大きな意味をもたらすことになる。

その点について、『ただその話は体系的なものはなく、ぶつ切りの話がただぽんぽんと出てくるだけなのです。いくら聞き込んでも、話全体は繋がらない。10年ぐらい気になってフレーズがわたしの頭の中で渦を巻いていたのです。するとある時、それがだんだん繋がって、全体像ができてきたんですね』と「仙人」との関係を回想している。では、その全体像とは何か。この本では、「すべてこの世に存在するもの、政治も、経済も、科学も、芸術も、スポーツも、あらゆるものは通底するテーマで繋がっている、ということがだんだん佐藤にも思えるようになってきた」と説明している。

木津川の河原から見上げた背割桜の流麗な枝ぶりと花々

それを私流に解釈すると、その通底するテーマとは人間がよりよく生き長らえるために、個人や集団としての人間がどのように行動しなければならないかということであると思う。その行動の真理を背景にした上で、自己と他者、自国と他国が理解し合い、よりよき道に進んでいくことが最も重要なテーマであるという認識だ。これが本質であり、「その枝葉のところにビジネスがあったり、世の中のいろんなことがある――そういうことが見えてきた」と語っている。ここで佐藤氏は自分の真の“使命”に目覚めたというべきか。

人にはそれぞれ使命が与えられている。大きな力を持つ人には、大きな使命が与えられている。小さな力を持つ人には、小さな使命が与えられている。それはすべて応分であり、その使命に向かって努力することで、世の中は少しずつより良き道を進んでいく。また、そうした使命に立ち向かうことで、自らの存在の意味が初めて理解できる。しかし、往々にして自らの使命を悟れない人間が多い。自己のことが理解できない人間は、他の人間やこの世のことを理解できない。また、自らのエゴや独善によって使命を曲解し、真理と逆行する人間も多い。しかし、そうした人間はよりよき道に進むことができず、いずれ天の裁きに遭う。逆に、使命にためにより良き道を切り拓こうと努力する人には、賛同者が現れ、天も味方してくれる。私には、今回の香港上場もその1つの表れであったような気がする。ただ、氏の真の使命はもっと高いところにあることは言うまでもない。

絶好の花火日和のなかでそれぞれの思いを持って桜を眺める人々

では、氏の真の使命とはどのようなことなのか。自身はこの点について、「できれば『3つの壁』を卒業して欲しい、という希望を私は持っています。それは、一つは『自己の壁』、次に『企業・団体の壁』、そして『国、民族の壁』です。過去の歴史を見れば、そこに争いが起きたことは事実です。そうした体験を世界の国々が、また多くの民族がしてきたわけです。では、グローバリゼーションの中で、どう共存・共生を図っていくべきなのか。わたしは、そのためには新しい秩序、枠組みづくりが必要だと考えています」と語っている。こうした世界観をもとに、氏は「ワンアジア」という新たな枠組みの構築に向けて動き出したわけである。

その詳細は以前にも書いたような気がする。つまり、「アジアの有力大学との間でネットワークを構築し、アジアの発展を図っていくうえでどう現状を把握し、変革していくか、その道筋と方策をみんなの知恵を出し合っていこう」という活動である。そして、「基本財産は100億円で、全額、佐藤が拠出している。佐藤は資金面で協力するが、財団の運営には口出しせず、アジアの頭脳を結集し、アジアの連帯と福祉の向上などを図っていきたいとしている」と氏の具体的なスタンスが説明されていた。これが半世紀かかって見出した自らの使命の具体像であった。果たして、この構想がどれだけの実効力を持つのか分からない。ただ、この活動を最も重要視し、積極的に取り組んでいる姿は大きな意味を持っている。

その姿が香港上場を引き寄せたと思うし、香港に拠点を持ったことがダイナムの事業のみならず、氏の「ワンアジア」構想に大きな力を与えてくれた。やはり、天はよく人を見ている。氏はホール業界の中でも傑出した人物で、業界内の旧弊と25年以上にも亘って戦い続けてきた。その行き着く先はすでに業界も日本も越え、アジア全体を鳥瞰するところまできている。この壮大さが何とも清々(すがすが)しい。まるで、私までがアジアの空を飛んでいるような気持ちになってしまった。(佐渡屋太郎)

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| | 2013/04/24 14:16 | |















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