遊技租界 『佐渡屋太郎のパチンコ商売道日記』

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“大阪規制”と“ファンニーズ”【佐渡屋太郎-vol.225】

事務所の近くの神社で行なわれていた修験道の祈祷会

いまは11月18日(金)18時15分。やっとパチンコ雑誌の原稿が終わった。大阪では、8月1日から始まった広告宣伝の規制強化、さらに10月1日からの特殊景品の価格改定と低額特殊景品の廃止という相次ぐ営業環境の変化に見舞われている。その3ヵ月のホールとファンの変化を追った記事が、12月号における私のメインとなった。興味のある方は是非とも読んでいただきたい。

その概略を簡単に説明すると、ホール側にとって最も痛かったのがイベントの禁止。その次が、特殊景品の価格改定による等価営業の禁止であったという意見が多かった。その結果、8月の営業は売上15%減、9月は全国的に前月と横ばいであったが、大阪だけが稼働ダウンを記録。10月は低額特殊景品(100円と200円相当)の廃止と、等価営業の禁止で前月比8%の売上低下を記録したという。ホールによって多少の上下はあるだろうが、私が取材した範囲では、だいたいこんなところだった。

それにしても、恐ろしいほどの売上ダウンである。しかも3ヵ月という短期間に、いきなり地滑り的に起こってきた。これまでホールは永年にわたり、“規制”の影響による稼働ダウンは何回も経験してきた。しかし、これほど“営業の根幹”に関わる規制を、相次いで受けたことは、96年から始まった“社会的不適合機の撤去”以来ではないだろうか。それも大阪府という“地域限定”で、先行して実施された。

大阪市民の皆さん、11月27日には投票所へ行きましょう

これらの“規制”で一定の効果が認められれば、全国に波及していく可能性も十分にある。この3ヵ月の変化を体験した大阪のホールは、“規制の力”を今更ながらに痛感しているのではないだろうか。しかし、これで終わったわけではない。8月の広告宣伝規制強化の厳しい指導が行なわれた大阪では、9月に入っても稼働はダウンを続けた。そして10月は新たな2つ規制により更なる売上の減少を記録した。つまり、この3つの規制は11月以降も、ファンへの認知が拡がれば拡がるほど、“ボディブロー”のように効いてくる可能性が十分にある。だから、この3ヵ月の売上ダウンは、これからの変化の“入口”に過ぎないという見方もできるのだ。

一方、ファンにとって最も不満が大きかったのが、低額特殊景品の廃止による“500円切り”の実施である。資金不足で4円パチンコが打てなくなって、1円に移らざるを得なかった。その上、端玉まで持っていくのかという怒りである。たかが500円未満と言うが、これが積もり積もれば大きな額となる。しかも負け続けてやっと勝ったときに、その勝ち金額が目減りするのだから、たまったものではない。今後は来店回数がさらに減ってくることだろう。

また、今回の規制(ファンにとっては遊技方法やシステムの変化)におけるファンへの説明も十分ではなかった。等価禁止に関しては、パチンコ雑誌に書いたこんなエピソードもあった。ある等価ホールの常連客が景品交換したら、いつものレートより金額が少なかった。そのため店長に文句を言ったら、“行政の指導でこうなった”と説明した。そこで常連客は大阪府警本部に電話を掛けて怒りをぶつけたという。府警本部からすぐ所轄に連絡が行き、所轄の担当官がホールに飛んできて、店長はしこたま油を絞られたという。返答の仕方が間違っているが、現場では正直言ってこんな認識で、顧客が納得できる説明は行なわれていないようだ。笑うに笑えない現状である。

2000円相当の特殊景品である「アドマイザー」

さらに交換率の変更に関し、あるファンはこんなことも言っていた。ある日、突然ホールから3日後までに貯玉を清算してほしいというメールがきた。清算しなければならない説明もなく、しかも急な話で何だか訳が分からなかった。しかし、後から考えるとだんだん腹が立ってきたという。その結果、ホールはさらに信用を失っていくことになる。ただ今後は顧客の大半が一般景品との交換ではなく、貯玉へ移行していくことだろう。それは言うまでもなく、低額特殊景品廃止の影響だ。

この件に関しては、換金率99%という大阪の悪しき実績がある。その換金率の高さこそ、“射幸性を高めている”というのが行政側の見解だ。これに対し、“500円切り”にした場合、貯玉システムのあるホールは、2%~2.5%の低減で換金率が97.5%~98%。貯玉システムのないホールは、3%~3.5%の低減で95.5%~96%。さらに規定路線に乗っている“1000円切り”が実施されれば、10%の低減で89%になるという予測もある。

しかし、この施策には無理があるのではないかと私は思う。そもそも大方のファンは、一般景品などほしがっていない。一時期、人気のあったブランド品もさっぱり出ないし、出ているのは低額の日用品くらいのものだ。景品コーナーをスーパー形式やコンビニ形式しているホールは、やや一般景品への交換率が高いというデータもある。しかし、景品の取り揃えをしても、魅力ある景品の導入に努力しても、換金率が50%に低下することはないだろう。

その理由は、ファンはもっと多く遊ぶための“軍資金”を求めているからだ。いま有り余っている“物”なんかほしくない。それはパチンコをしない人も同じだろう。ある県の行政担当官は“世論によって、法律も変わる”と言った。それなら、“多くのパチンコファンの声によって、法律も変わる”という可能性もある。ホールにとって、最終的な“味方”となってくれるのはファンしかいない。だから、ファンの声を大切にしなければならないのだ。しかしいま、行政側の大義名分と顧客のニーズが大きく乖離してきている。もっと、顧客のニーズに合った抜本的な改革が必要だ。それをパチンコ業界が掬って、この業界の改革に体を張らなければならない。そうしないと、どんどんファンにしわ寄せがいってしまう。そして、最終的にはファンからも見捨てられてしまうことにもなりかねない。

行政が考える“大衆娯楽像”として、よく例に出される情景がある。それはお父さんが会社の帰り道でパチンコを打って勝った。その玉をお母さんのために缶詰に替え、子供たちのためにお菓子に替えた。そして、自分用にタバコも取ってきた。大きな袋を抱えて帰ってきたお父さんの姿にお母さんは微笑み、子供たちはお菓子のお土産に飛び跳ねて喜んだ。これは昔懐かしき昭和30年代の光景ではないだろうか。まるで小津安二郎の映画に出てきそうな1シーンである。

それから50年の歳月が流れた。その間、遊技機も変わり、ホールも変わり、ファンの姿も大きく変わってきた。いま、缶詰やお菓子を持って帰っても誰も喜ばない。その前にお父さんが帰っても、誰も迎えてくれる家族はいないのではないか。お父さんは少ない小遣いの中からやりくりし、何とか1回でも多くホールに行きたいと密かに財布を見つめて考えている。しかし、勝つことも少なくなって、月に1回か2回がやっとの状態になってきた。それでもパチンコを打って遊びたいと思っている。何で遊べなくなったのだろう。ここに問題の根本があるように思う。

いま4円パチンコを1時間、大当りを引けずに打ったら2万円から2万5000円ほど必要だという。そして、6割の顧客が負けて帰るというデータもある。今回の取材であるホール企業の幹部と話していて、「これではいけない」という言葉が出てきた。極めて真っ当な意見であると思う。私はこの言葉をずっと待ってきた。はっきり言えば、パチンコはこの50年の間に、“ギャンブル化”してしまった。遊技機も、ホールも、ファンもすべてが、少しずつ“ギャンブル化”の道を進み、ふと気付いたら、お父さんのお小遣いではホールに行けない“大衆娯楽”になってしまった。

500円相当の特殊景品である「しおり」は来年、廃止になるかもしれない

“射幸性”は魔物で一旦、取り付かれるとどんどんと膨れ上がっていき、後に引き返すことが非常に難しいウィルスのようなものだ。その効力は、変わっていったファンの姿を見れば自明である。その50年の歳月を引き戻すことは容易なことではない。そのためには、遊技機が変わり、ホールが変わり、その上でファンにも変わってもらうことをお願いしなければならない。これは業界にとっての“大手術”となる。その痛みに遊技メーカーやホールが耐えられるのか。そして、その“大手術”の後、果たしてパチンコ業界は回復することができるのか。

その点で考えると、今の規制は“射幸性の低減”というテーマに対しては、“対処療法”でしかない。とりあえずワクチンを打って、その抵抗力の実状を探っている段階であると思う。ただ、想定される“大手術”はそんなに未来のことではない。3年くらいを想定して、その間にホールが顧客と向き合った営業と、企業的な体質改善をどこまでできるかという“時間勝負”の改革を求められていると、私は思う。そのキーワードは何回も言うようだが、ホールの“信用”であると私は思い続けている。

たとえば、低貸というスタイルも考え出されたが、ホールの“顧客本位”の心がこもっていなければ、ただの騙しにしか過ぎない。分りやすく言えば、次のようなことになる。あるところに安売りの店(低貸店)ができました。品物(機種)も意外と豊富で、買いたい(打ってみたい)と思っていた商品(機種)もたくさんありました。でも、買ってみたら、不良品(抜き台)ばかりで騙されました。もう2度とあんな店(ホール)には行きません。

この業界にとってすべての元になるのは、ファンの“遊びたい”という気持ちだ。そのニーズが非常に高いのに、それに応えられない現状がある。私が取材したファンは、いまのホールは、“遊べない”と口を揃えて批判した。これができない問題点は、一体どこにあるのか。そこを考える必要がある。ファンは低価格(これは貸玉料金を下げるということではない、最終的には適正なリターン)で、好きな台があって(自店の顧客のニーズにあった機種導入を行なうこと)、交換玉数に合ったしっかりした整備をして(これも将来的にはできなくなる)、その台の面白さを引き出し(整備技術)、少しでも長い時間を遊べて、さらに少しでも多く通える機会を作ってくれるホールをファンは求めている。

そんなことをしていたら潰れるというホールは、ここ数年の間に実際に潰れるかもしれない。いま大阪では、イベントがなくなり、等価営業もなくなって、顧客の“浮遊現象”が起こっている。今まであったホールと顧客を結びつける“ストアロイヤルティ”が、想像以上に希薄になってきたのだ。自店と顧客はそれだけの関係であったのかと思えば、悲しくもなるが、実際、販促や目の前のニンジンで顧客を釣ってきた“反動”も如実に現れてきている。その一旦“浮遊”した顧客たちが、最終的にどのようなホールを選ぶのか。貯玉システムも関わってきているから、そのホール数は以前より減っていくだろう。

ここで虚飾を取り去られた“ホールの実力”が試されるわけだ。以前、取材した広告宣伝規制の先進地である岐阜県では、多くのホールが誠意ある営業をしようと前向きな姿勢になっていた。その結果を見て、だいぶ救われたような気持ちになったことを覚えている。多分、その方向性は間違っていない。その姿勢をどのように自店の顧客に伝えるのか。それは、まさに自店で展開している営業そのものを見て、判断してもらうしかない。それにしても、大阪の3ヵ月は厳しかった。大阪を代表する有名繁盛店で、片島に遊技客が1人もいないという姿も初めて見て驚いた。今回の取材によって、ますます今後の動向が気になり出した。(佐渡屋太郎)
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