遊技租界 『佐渡屋太郎のパチンコ商売道日記』

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大阪の“等価交換”禁止までの経緯【佐渡屋太郎-vol.224】

6年前に撮影した大阪の換金所

いまは10月27日(木)の20時20分。いまやっと、月末締切り原稿の3本目を書き終わった。しかし、パチンコ雑誌の社長から、大阪の特殊景品についての記事を、できるだけ早く有料Webにも書けという“厳命”が下っている。この記事はパチンコ雑誌に6ページにわたって書いたのだが、雑誌が出る前にWeb会員に伝えたいという意図によるものだ。体はヘロヘロになっているが、雑誌が出るのが10月31日なので、もう残された時間はほとんどない。明日は取材で、月末までにもう2本の原稿を書かなくてはならない。

それにしても、いまパチンコ業界は行政による相次ぐ“規制”によって、手足を縛られた状態になっている。とくにその姿勢を先鋭化しているのが、大阪府警である。具体的に言えば、広告宣伝規制、100円と200円特殊景品の廃止、その結果として等価交換営業の事実上の禁止という事態になっている。その流れを追ったのが、パチンコ雑誌での記事であった。

確かに、これらはいずれもホール営業の根幹に関わる重大な改変だ。しかし、もっと重要なことは、こうした行政側の“意図”や指導の“背景”を知ることだと思う。大阪の例で言えば、これまで特殊景品そのものにまで、警察が踏み込んでくることはなかった。その意味でいえば、かなり強硬な指導であったと言えるだろう。しかし、なぜそこまで切り込んできたのか。その“意図”を十分に理解しておかないと、今後はもっと厳しい指導が次々と断行され、最終的には果たしてこの国に“パチンコは必要か”と議論に行き着くことになると思う。

換金所に掲示されていた今はなき100円景品を含む価格表

まず、結論から言うと、これら一連の指導の“意図”は、“射幸性の低減”にある。そして、“背景”を簡単に言うと、行政側のホール業界に対する怒りと不信感がついに頂点に達し、“堪忍袋の緒が切れた”ことが大きな要因となっていると思う。この事態をあまり“甘く”見ない方がいい。セミナーなどで、“広告宣伝規制”の裏をかくような手法が紹介されているが、これは行政の怒りに対し、“火に油を注ぐ”ようなものだ。いま求められているのは、業界側の自覚と責任能力だ。もしかしたら、これが最終勧告となるかもしれない。

警察嫌いの私が言うのもおかしいが、警察の声を少し分かりやすく代弁すると、次のようになる。「パチンコ業界は、大衆娯楽、大衆娯楽とお題目のように何十年も唱えてきた。しかし、大衆娯楽であるためには、射幸性を低減して“ささやかな庶民の楽しみ”でなくてはならない。それは、これまで何回も口をすっぱくして言ってはずだ。しかし、これまでやってきたことは何だ。果たしてパチンコ業界に、射幸性を低減する気持ちと覚悟が、本当にあるのか。いままでずっと待ってきたが、もう我慢ができない。業界でできないのなら、私らがやる」。私の想像では、こんな声が大阪府警内で起こったのではないかと思う。

この点を踏まえたうえで、これまでの経過を時系列で見ていくことにしよう。まず今回の件で端緒となったのが、5月中旬に大阪府警の保安課長からホール組合やアウトサイダーのホールに送られた1通の文書であった。内容は、平成18年12月18日付でホール5団体(全日遊連、日遊協、同友会、余暇進、PCSA)が警察庁の提出した決議および要望書に対し、2項目についての調査と回答の依頼であった。

大阪福祉防犯協会側の500円相当賞品

この平成18年12月の文書とは、賞品の取り揃えの充実に関し、ホール業界から6項目の要望が記されたものだ。私の推測だが、これを見て大阪府警は怒ったのではないかと思う。本来なら、業界自身が特殊景品に交換する“換金率”の低減に、率先して取り組まなくてはならない。それなのに、要望か提案か知らないが文句ばかり言ってくる。果たして、この業界は本当に、“換金率”を下げようという気があるのか。

もっと言えば、カジノ法案の絡みで、パチンコがギャンブルではなく、大衆娯楽であると主張しようとしても、“換金率”が高くてはその主張は通らなくなる。その結果、パチンコ産業自体が存亡の危機に陥る。その状況を分っているのか。それなのに、大阪のホールを調べてみると、客が玉を交換にくると、何の声掛けもせずに黙って特殊景品を渡しているホールが数多くある。さらに現在、大阪の換金率は99%にも上っている。一般景品を取り揃えても、それを交換してもらわなくては意味がない。もう、自覚のない業界に任せておくわけにはいかない。というわけで、今回の“強権発動”に至ったと私は推測する。

大阪府警からの調査と回答依頼は、①賞品の市場性及び市場価格の疎明について、②賞品の持ち帰り推進について、の2点であった。詳しくはパチンコ雑誌を見てもらうことにして、ここでは簡単に説明する。①から出てきた問題は、特殊景品の“市場性”である。一般市場で流通している商品は、仕入れ価格に卸や小売の儲け分を2割くらい乗せて販売している。一方、特殊景品は“等価交換”の場合、100円で仕入れたものをホールが手数料を景品業者に払い、100円で客に提供している。これは“市場性”を持っているとは言えないというのが、大阪府警の見解であった。つまり、“等価交換”はあり得ないというわけだ。

同じく1000円相当賞品として提供されているペンダントトップ

その結果、従来の特殊景品の価格を変更することになった。具体的には(パチンコ4円、パチスロ20円の貸玉料の場合)、100円→112円~168円(28玉~42玉、5.6枚~8.4玉)、200円→224円~336円(56玉~84玉、11.2枚~16.8枚)、500円→560円~840円(140玉~210玉、28枚~42枚)、1000円→1120円~1680円(280玉~420玉、56枚~84枚)、5000円→5600円~8400円(1400玉~2100玉、280枚~420枚)という価格の変更であった。つまり、パチンコでは28玉以上、パチスロでは5.6枚以上でないと特殊景品を提供できなくなったわけだ。これは事実上の“等価営業”の禁止を意味する。

実に巧妙な筋立てである。特殊景品にこれまでの“市場流通性”だけでなく、価格面にも“市場性”の概念を持ち込むことによって、見事に“等価営業”を封じ込める形になったのだ。これまで営業手法の分野で、最も“射幸性”が高いと言われてきたのが、“等価営業”であった。それに対し、“射幸性の低減”という大義名分と、特殊景品の“市場性”という原理の価格面への敷衍によって、事実上の廃止に追い込んだわけである。しかし、ホール側とすれば、営業の幅が狭まったという点において、大きな損失であるのは言うまでもない。最も分りやすい例で言えば、パチスロの等価がなくなったことで、ファンにどのような影響を与えるかを考えてみれば分る。

果たして、この巧妙な発想はどこから出てきたのか。もし、ホール側から“等価ホール潰し”のために、大阪府警にもたらされたのであれば、これはある意味での“自殺行為”に匹敵する。その責任は極めて大きい。そんなことはないだろうとは思うが、この点はきっちり検証してみる必要がある。というのは、先の岐阜県での事例でも見たように、大阪で一定の効果が出れば、全国に敷衍していく可能性が大きいからだ。それでなくてもホール業界は、警察庁に各都道府県による指導の“温度差”の是正を要求している。これが大阪の特殊ケースであるとしたら、大阪府警の“勇み足”ということになってしまう。

2点目は、賞品の持ち帰り推進についてである。このテーマに関する現状は、先に説明した。換金率99%の現状を打開するには、一般景品の取り揃えだけでは埒(らち)が明かない。そこで考え出されたのが、低額特殊景品の廃止である。まず、100円と200円の特殊景品の廃止を、ホール側が決断せざるを得なくなった。いわゆる“500円切り”である。しかし、これは暫定措置に過ぎない。これでも“換金率”が低下しなければ、次の500円景品の廃止に踏み込まざるを得なくなっている。こうなると、“1000円切り”になってしまう。

500円景品を廃止すれば、“換金率”はいまより10%くらい低下するのではないかという予測もあるようだ。そうなると、顧客は1000円未満の端玉を、一般景品に換えるか貯玉するかしかなくなる。それでなくても資金的に逼迫している顧客は、等価交換の事実上の禁止、さらに予定路線に乗っている“1000円切り”に、果たしてどのような反応を示すのだろうか。その反応に期待したい。射幸性の低減に本気で取り組もうとしないホール業界、その自覚のなさに業を煮やした大阪府警の強権発動というのが、今回の特殊景品をめぐる一連の騒動の図式だ。

同じく5000円相当のペンダントトップ

しかしその結果、最も不都合や不利益を蒙るのはファンである。ホール側はそのことをファンに伝え、理解を得る体勢はできているのか。さらに、この改変は果たしてファンに納得してもらえるのか。今回の1件で最も気になるのがこの点である。さらに、ファンの“ニーズ”と今回の“規制”の間にある大きな“矛盾点”にも目をふさぐわけにはいかない。その点に関しては、次回にじっくり考えてみることにしたい。    (佐渡屋太郎)

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