遊技租界 『佐渡屋太郎のパチンコ商売道日記』

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ぱちんこ情熱リーグ④-(JOY STAGE)【佐渡屋太郎-vol.218】

写真キャプション=ホール紹介で結束力をアピールする「JOY STAGE」の趙宋在常務とスタッフたち

いまは7月27日(水)の18時53分。佐渡屋太郎は目下、“お盆進行”のために東奔西走している。何とも唐突な出だしであるが、雑誌の世界においては、1年に3回の山場がある。それは“年末”と“ゴールデンウィーク”と“お盆”である。つまり、制作側が長期休暇を取るために、締切りが前倒しになるわけだ。とくに、“年末進行”に至っては12月号と1月号を並行して進め、締切りはだいたい12月10日から15日くらいに設定される。さらに、年末までに2月号分の取材を終わらせておかないと、年明けからが大変なことになる。

このシステムでとくに苦しいのは、数誌に原稿を書いている場合だ。通常は10日、15日、20日、25日など締切りが設定されているのが、12月には2ヵ月分の原稿締切りが、10日から15日に集中しまうことになる。これは何回経験しても“地獄”というしかない。人間には頭は1つで手は2本しかない。このときばかりは、“猫の手も借りたい”という言葉がつくづく身に滲みて感じる。

年末ほどではないが、この“お盆進行”も私にとっては毎年、大きな試練となる。それは、私が盆休みを1週間以上も取るからだ。毎年、夏は佐渡に帰ることにしているが、大阪からは遠いので、行きに1日、帰りに1日が掛かってしまう。つまり、1週間の休みを取っても、実質的に佐渡に居られるのは5日間しかない。しかもその間、墓参りや親戚との飲み会、花火大会に盆踊り、はたまた母親の買い物の付き添いや家の補修など、様々な用事に忙殺されることになる。

写真キャプション=18歳からこれまでの経緯を回想する趙常務と盟友の藤岡店長

しかし、佐渡屋太郎が本当に佐渡でしたいことは、2万冊の蔵書の背表紙を眺めて、“畑の家”で静かな時間を過ごすこと。夕方に海へ行って、夕焼けを見ながら暗くなるまで釣りをすること。大阪に持って帰る盆栽の苗を探すこと。さらに、昨年から自分の任務となったこととして、父が残した“畑の楽園”を脅かす外敵を見つけて退治することである。ただここ数年、そんな優雅な盆休みを取った覚えはない。大阪から脱兎のごとく「サンダーバード」に飛び乗り、佐渡で汗みどろになった末に、帰りの船に乗って疲れのために爆睡するという繰り返しである。

今年は8月12日に親戚の飲み会があり、墓参りは8月13日に設定されているという。2日前に、弟の佐渡屋次郎から連絡があった。佐渡屋次郎は尼崎から8月11日に、家族4人を連れて、車で佐渡へ向かうという。一方、長男の佐渡屋太郎としては、最悪でも8月12日の夜には佐渡に着き、親戚の飲み会の席に“存在”しなくてはならない。ここに居ないと母親は腹を立て、親戚一同は私の悪口を炸裂することになる。さらに最悪のケースは、翌8月13日の墓参りに私が“存在”しないことだ。その場合は、長男としての資格がなく、先祖や父親の恩を知らない不孝者で、佐渡屋家にとっての“不要者”とまで言われてしまう。

実は、その墓参りでの“不在”という掟破りを、佐渡屋太郎はこれまで2年にわたって連続で冒してきたのだ。私が思う以上に、佐渡での私の立場は最悪の状態にあるようだ。1昨年は原稿が書き切れなかった。昨年は原稿こそ書き切ったが、台風で直江津から佐渡へ向かう船が出なかった。これは不可抗力であるが、そんなことは“佐渡の論理”には通じない。そして、今年である。この8月だけは欲を出さず、定期物の記事だけで済まそうと思っていた。

しかし、こういうときに限って、いろんな原稿依頼が入ってくる。世の中はなかなかうまくいかないものだ。旅行関係など新たな媒体の仕事も入ってきた。これはどういうことなのだろうか。だからいま、連日のように取材に駆け回っている。もう、体は連日の猛暑で限界状態になり、頭は朦朧としている。仕方ないので、氷とアルコール入りの水で、体を冷やしているところだ。これはいつもの習慣であった。しかし、ここが勝負どころである。ここを乗り切らないと、佐渡屋太郎は指定された期日に、皆が待つ佐渡に“存在”することはできないのだ。いま、若き日の闘志を思い出し、毎日のように腹筋運動と腕立て背伏せをしてから、猛暑でうだる関西の街を駆けずり回っている。

写真キャプション=決勝大会のプレゼンで自身の変化を発表する女性スタッフ

さて、今回のテーマはいよいよ“ぱちんこ情熱リーグ”の5回目で、決勝大会における4番目の出場チームとなった。やっと先が見えてきた。この連載にも飽きてきたが、やり始めたからには、最後まで突っ走らなければならない。例によって疲れてきたので、パチンコ雑誌の記事を引用する。見出しは、「父親の急逝を受けて10年、“接客重視”の改革を実現」というものであった。

4番目にプレゼンを行なった愛媛県の?ミヤマ実業は、前述の通り、今回のリーグで上位5店舗のうち2店舗を、“狭き門”に通してきた。愛媛県にあり、しかも3店舗しか持っていないホール企業が、301店舗が参加したリーグで、そのうちの2店舗が2位と4位にランクインを果たした。これは誰が見ても、大きな驚きを感じるだろう。そんな“奇跡”を、この企業は起こしたのだ。

では、ミヤマ実業とは、一体どんなホール企業なのだろうか。この若き軍団を率いるのは、28歳の趙宋在常務である。10年前となる18歳のとき、父の急逝により経営を引き継いだ。当時、祖父と父が残してくれた2店舗があった。1人では不安だったので、小学校6年生のときからの親友である、現在の藤岡店長に一緒に入ってくれと頼み込んだ。

趙常務はおじさんから「こんな店を継がないとはどうかしている」と言われたそうだ。また、藤岡店長は趙常務の親戚から、「あんたが若社長を支えていかなければならない」と諭された。それで仕方なく18歳の若者2人は、今にも潰れそうなホールに入り、激動の10年間が始まることになる。

このとき、趙常務は「いまに会社を大きくして見返してやる」と心に誓ったという。しかし、スタッフは次々と辞めていった。それから6年間、失敗と成功の繰り返しなから、先の見えない泥沼のような“ホール改革”に取り組んだ。そして06年12月26日、ついに夢の新店「JOY STAGE 大洲店」のグランドオープンに漕ぎ着けた。

写真キャプション=全スタッフがステージ上に上がって、この決勝大会に賭けた?ミヤマ実業の強い思いを表わした

これは趙常務のひとりの力ではなく、多くの人に助けてもらった結果である。そのとき初めて、感謝の気持ちを持ったという。そして、「環境のせいにせず、仲間とともに感謝の気持ちを忘れずに、回りの人たちに恩返しをしていこう」と決意した。

これが“JOYの真心サービス”の大きなきっかけになった。つまり、スタッフの皆で気付いたこと、感じたことを行動に移すなかで、他店にはない接客が生まれてきたのだ。雨の日に車が駐車場に入ってくると、傘を差して迎えにいく。帰る交通手段のない顧客がいれば、車で自宅まで送っていく。タバコや飲み物が必要な気配があったら、声を掛けて買い出しに行く。とにかく、そのサービスは徹底している。

こうした中で役職者や社員、アルバイトが分け隔てなく互いに助け合い、支え合っていく社風が生まれてきた。現在では、スピーチ訓練、ブログの毎日更新、業界を超えた講演会やセミナーへの参加など、さらなるレベルアップに取り組んでいる。

ここで記事は終わっている。すでにご存知のように、「第2回ぱちんこ情熱リーグ」において、この「JOY STAGE」が日本一の栄冠に輝いた。プレゼンにおける趙常務の迫力と、18歳からホールに飛び込んで様々な苦難を経験し、その末にスタッフとともに高レベルのホールを作り上げてきたというドラマ性は、公平に見ても他を圧倒していた。したがって、「JOY STAGE」の日本一は順当な結果と言えるだろう。

写真キャプション=日本一が決定し、木山理事長と抱き合って喜ぶ趙常務

実は、この「JOY STAGE」は第1回大会でも健闘した。そのときは、愛媛県の中心部から離れたエリアにあり、これまで聞いたことのなかったホール企業だったので、不思議に思って興味を持ったことを覚えている。参考まで言えば、第1回大会の第1次予選では、18位に「JOY STAGE松前店」(愛媛県伊予郡、296台)、29位に「JOY STAGE大洲店」(愛媛県大洲市、480台)という好成績を上げている。さらに第2回目となる今回の2次予選では、2位に「JOY STAGE EVOLUTION」(愛媛県伊予郡、217台)、4位に「「JOY STAGE大洲店」(愛媛県大洲市、480台)を通してきたのだ。

その実力は、2回にわたる予選結果でも十分に実証されている。では、都会エリアから遠く離れ、3店舗しかホールを持っていなくて、若い経営者がトップにいるホール企業が、なぜ参加300店舗の頂点を極めることができたのか。逆に言えば、どんなホールでも日本一になる可能性はあるということだと思う。そのなかで、なぜ「JOY STAGE」がトップに立てたのだろうか。

決勝大会のプレゼンを見て感じたことは、まず田舎のホールであるがゆえに、貪欲に経営や社員教育などの情報収集を行なっていること。聞くところによると、業界外のセミナーなどにも積極的に参加いるそうだ。そして、いいと思うことは素直に受け入れ、実践につなげていること。このように経営者自身が若くて、勉強をしていこうという態度を取っていることが、すなわち?ミヤマ実業の前向きの経営姿勢となって表れている。また、その経営者がスタッフの先頭に立って、“ホール改革”に立ち向かっている点も注目すべきだ。スタッフとの年齢さも少なく、自ら率先垂範して行動する姿勢が、会社全体における一体感の醸成に大きな役割を果たしていると思う。

写真キャプション=木山理事長から“ホール日本一”の優勝旗を受け取る藤岡店長

それにしてもバイタリティに溢れたホール企業であった。こうした企業がどんどん力を付けてくると、この業界にも活力が生まれてくる。そんな若くて有能な経営者の存在を、保有するホールの活躍によって知ることができるのも情熱リーグの楽しみの1つだ。近頃、大手ホール企業の元気がなくなっているが、そんなときこそ持てるバイタリティを爆発させ、この業界の台風の目になってもらいたいものだ。1つの企業でだめなら、同じ考えを持つ10の企業が集まればいいし、10で足りなければ100企業が集まって状況を変えていけばいい。

これまで“普遍”であると思っていた状況も、時間の経過とともにすこしずつ変化してきている。その間に新たな考えも生まれ、その考えをもとにした活動が徐々に活力を増していく。“活力”が増すということは、賛同者が増えているということでもあるし、新たな時代の要請に適(かな)っているということでもある。そしてある日、これまで“普遍”であった状況が崩壊し、新たな状況が台頭してそれに取り代わっていく。こうして歴史は作られてきた。ホール業界もホール自体もいま、大きな転換期にあると思う。

新たなホール像を描き、ファンをはじめとした賛同者を増やし、やがてそれがスタンダードとなり、ホール業界やパチンコ産業自体を変えていく。では、新たなホール像とは具体的にどんなものか。これまでと比べた最も大きな相違点は、ファンや顧客に対する考え方であると思う。何回も言うが、結局は“信頼されるホール”になることだと思う。そのためには、きれいごとだけではなく、これまでタブーであった出玉や還元率も表に出して考える必要がある。

これまでホールにおける最大の課題は“稼働”であって、その稼働のアップの手段として出玉や新台、販促があった。しかし、稼働を上げるための新台や販促が、これまでの“騙し”や“煽り”によって集客効果を失ってしまうと、最後の集客手段である還元もできなくなってしまう。

一方、顧客の立場になって考えると、最大の課題は“還元”であって、新台を打つのも販促によって来店するのも、その新台やイベントに出玉を期待するからだろう。出玉にはそれぞれのホールによって限りがあるし、毎回勝てるなんて顧客も思っていない。しかし、顧客がある程度の納得をする“還元率”はあるだろう。それを確保することが、ホールの“信頼度”であると思う。

写真キャプション=決勝大会後の記者会見で、木山理事長と記念撮影を行なう「JOY STAGE」の出場者

これは射幸性を煽るという派手な営業ではなく、大勝ちはできないが、ある程度の勝ち率を確保するという意味である。そのためには、昔の“1回交換”や“定量制”を復活させるという手もある。そこまでいかなくても、この顧客の側に立った“還元率の確保”を、ホールにおける第1のテーマに掲げる店舗が少しずつ出てきた。それは地味な活動で、認知には時間が掛かるが、常連客と信頼の絆を結ぶことで、派手ではないが強い営業を続けている。

“還元率を確保”するために、ホール側がしなければならないことは、徹底的な経費の節減だ。当初は節減分を還元に当てて我慢を続けていかないと、ホール自体が回っていかない。そんな我慢を続けていきながら、還元率を守っていくという堅い信念を崩さないことによって、顧客からの信用の獲得につながっていくわけだ。先月号で取材したホールがそうした方針を取っており、随分と感心したし、真っ暗なホール業界にあって僅かな“光明”を見たような気がして元気付けられた。実際、このホールでは着実に稼働を上げてきている。こんなホールに頑張ってほしいし、佐渡屋太郎は全力で応援したいと思う。

先日、情熱リーグのセミナーに行ったら、「リーグに参加したら、稼働は上がるんですか」という質問が飛んでいた。私に言わせるなら、“稼働”は結果であり、目的ではない。顧客に喜ばれるホールを作ることが“目的”で、その目的が顧客の心に通じたときに、結果として“稼働”が上がってくるのではないか。逆に言えば、稼働を上げること目的としているから、派手な宣伝や過重な負担となる新台も導入しなくてはならない。そして、その経費を顧客から抜かなければ、ホールは回っていかないような状況に陥っている。これで果たして顧客は喜んでいるのか。さらに言えば、何のためにパチンコホールを営業しているのか。

実際、低貸営業に走ってしまった結果、ホールにおける発想が大きく変わってきている。以前は、郊外の3000坪以上の物件はないかという問い合わせが多かった。しかし、いまは節電によって消費意識の低下した首都圏のホール企業や、首都圏に進出しようとして計画を変更した中京圏のホール企業が、関西圏に物件を求めている。それも郊外店ではなく駅前店の200台から400台の居抜き物件だ。イニシャルコストを掛けず、すぐ営業を始められるのが目的であるという。時代は大きく変わってきた。

その背景には、ホール自体の“構造変化”がある。これまでは稼働を上げることによって、還元率をアップさせるという考え方であった。それは当時、顧客も多かったし、競合店に勝たないと稼働もアップしなかった。だから競合店に勝つために、大きな投資を敢行して1000台の大型ホールも作ったし、新台の大量導入も行なった。その結果、そのエリア内の他店の顧客ばかりでなく、遠方からの顧客も吸引して莫大な売上を計上し、それなりの還元を行なうことによって、ホールのブランド(信用)を確立した。

しかし、世の中の不景気やパチンコそのものに対する信用低下によって、全体的な客数が減少していく。その結果、大型ホールによる新台の大量導入による稼働アップというビジネスモデルが崩れたような気がする。大型ホールで稼働を維持できているホールはいいが、稼働がダウンしたホールは、店舗に掛けた投資や新台導入の費用が重く圧(の)し掛かってくる。これで果たして、顧客が納得する還元ができているのだろうか。そのなかで、1つの集客手段として低貸営業が導入されるようになる。これは利益率ではなく、総体的な利益額の大幅な減少をもたらすものであった。

その頃、駅前の小規模老舗ホールが客で沸いているという話を聞いた。土地の償却も終わり、新台もそんなに導入しない。つまり、経費比率が異常に低いのだ。しかしながら、これまで数少ない常連客を大切に守ってきたようなホールだ。そこに郊外の大型ホールから、何人かの顧客が流れ込んできた。インフレからデフレ、大型店から小型店、郊外店から駅前店――パチンコ業界では“原点回帰”という言葉はきれい過ぎるので、“先祖返り現象”とでも言っておこう。

ホールの“騙し”や“煽り”に疲れ、ボロボロになったパチンコ好きの顧客が、最後の癒しの場に選んだのが結局、昔からある駅前の小さい“パチンコ屋”だった。大勝ちもできないが、大負けをする気にもならない。新台はないが、そこそこ遊べる台はある。若くてきれいなスタッフはいないが、話し相手になってくれるおばちゃんはいる。チラシやDM、会員制もないけど、駅前で相変わらずの営業をずっと続けている。

パチンコなんて所詮、そんなものでいいのではないかと近頃、思っている。逆に、そんな存在にならないと、世間からの共感は得られないのではないか。だから、パチンコ業界のTVCMを見ると、業界自体の悲鳴を聞いているような気になる。そのCMをパチンコファンやパチンコをしない人たちは、どのような気持ちで見ているのだろうか。“因果応報”という言葉が浮かんでくる。自分たちがやったことが、いま自分たちのもとに返ってきている。

だからこそ、顧客を安心して遊ばせて、その永い関係の中で喜んでもらうこと。遊技台と顧客のいい関係を作り上げること。なくなったら困ると多くの人に思ってもらえるホールになること。そんな“存在”になることを、真剣に考えたホールが最後には残っていくような気がする。顧客はその当たりをよく見ている。2年にわたって親類との飲み会や墓参りに“存在”できなかった佐渡屋太郎が言うのもおこがましいが、その場所に多くの人から認められて“存在”することの重要性を、今更ながらに痛感している。(佐渡屋太郎)


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