遊技租界 『佐渡屋太郎のパチンコ商売道日記』

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ある酔客からの40分間の電話【佐渡屋太郎-vol.156】

写真キャプション=中洲で飲んだ後に行ったホテル近くの屋台


 いまは11月21日(土)の10時25分。今週は16日(月)に「ぱちんこ情熱リーグ」のセミナーがあり、18日(水)と19日(木)は余暇進(一般社団法人余暇環境推進協議会)の展示会&セミナーの取材で博多に行ってきた。本来なら、その件で2~3本の記事を書かなければならないのだが、いまは書く気がしない。さらに20日(金)の締め切りの原稿も2本あるが、なおさら書く気がしない。

 実は先週から気に掛かっていることがあって、昨夜もパチンコ雑誌の社長と飲みながら話し合った。そのため、また事務所に泊まり込む羽目になったが、久し振りに“実り多い”語り合いであった。だから、備忘録としてまず、この件について書いておかねばならないと思い立ったのである。

 まず、いま佐渡屋太郎が考えているのは、いつまでこのパチンコ業界は“堂々めぐり”を繰り返しているのだろうかということだ。さらに、その“堂々めぐり”の起因は果たして何処にあるかということである。思い返せばこの業界には、92年のパチンコPCカードの導入、96年の社会的不適合機の撤去、06年のみなし機撤去という厳しい“鉄槌”(てっつい)が下ったこともある。ホール営業に関しては、パチンコ組合の自主規制撤廃、等価・高価営業、巨艦店ブーム、そして今回の低貸営業があって、またそろそろ逼迫した状況になろうとしている。その間、パチンコの遊技人口は94年の3000万人をピークに減少傾向にあり、08年に微増したとは言え、1580万人にまで落ち込んでいる。

写真番号キャプション=11月16日に開催された「ぱちんこ情熱リーグ」のセミナーには、250人もの関係者が集まった


 そんな折、先週の14日(土)に見知らぬ人から電話が掛かってきた。パチンコ雑誌の社長の古い友達であるという。社長に会いたいが、どうしたらいいかという用件だった。しかし話し振りを聞いていると、完全に酔っている。私はその日、翌15日(日)一杯がデッドラインの6ページの原稿を抱えていた。その電話で先方はいきなり、パチンコ業界誌の批評を始め、「ぱちんこ情熱リーグの記事は良かった」というから、「私が書いた」と応えた。それから急に先方が乗ってきてしまった。今いる飲み屋には話し相手がなく、業界のことが分かる誰かと語り合いたかったのだろう。ずいぶん乱暴な物言いであったが、この業界の核心は掴んでいるので、私も失礼な対応はできない。結局、40分間も話し合ってしまった。

 その後、私も酒を飲みたくなって、その日は真面目にやれば3時間で書ける原稿を抱え込んで、飲みながら事務所に泊まってしまった。そしてその酔客は私に、「この業界がダメな原因はどこにあると思うか」と聞いてきた。業界にいる人間にとって、“一番きつい”質問である。私は「客を殺しているホールの経営者だと思う」と答えた。そのとき、1円パチンコで抜きまくっているホール経営者の顔が浮かんだ。酔客はその返答に満足して、さらに「ホール経営者の“心”だ」と言い返してきた。

写真キャプション=余暇進の展示会&セミナーでオープンのテープカットを行う関係者


 その酔客は、14年間もパチンコ業界の人材育成の会社を運営してきたという。関西で会社を立ち上げ、東京にも進出しているそうだ。しかし、この14年間に指導したなかで、関西では伸びたホール企業は1社しかないという。それは滋賀県のH社で、私もある関係でよく知っている。「そのH社は店舗数も順調に増やし、客に対して“心”のこもった営業をしている」と評価した。「しかし、他のホール企業の経営者は“儲け”に走ってしまって結局、何も変わっていない。私はもう65歳で、今までの努力を思うと人生が虚しくなる」と嘆いていた。顧客と面と向かって接するホールが、客の“信頼”を裏切っているという指摘であった。

 あと1つ、この問題で気に掛かっているのは、行きつけの飲み屋でのエピソードだ。そこにパチンコ好きの“おっさん”がいる。いつも私にパチンコに関する質問をしてくるので、できる限り答えている。ちなみに、その飲み屋で私は“詐欺師”と呼ばれるようになったパチンコ業界に関係しているからだ。そのおっさんは、パチンコホールに大きな“不信感”を持っている。ホールが機械に“何かをしている”と思っているようだ。どう考えてもおかしいという場面を、何回も見ているという。しきりに「電波を飛ばしているんやろ」「裏に何かを仕込んでいるんやろ」と聞いてくる。

 おっさんの打っているホールは有名な大型店で、そのホールではそんなことはしないはずだと答えている。そのおっさんは元大工でいまは年金で生活している。パチンコ以外の分野でもすごく知識を持っており、いろいろ教えられることが多い。その尊敬すべき人物が、パチンコを疑っている。これは“詐欺師”にとって、実に悲しいことである。私はいつになったら、“詐欺師”の汚名を返上できるのであろうか。

 しかし、私の知っている関西の某有名ホールでは、ついにパチスロに“B”を仕込んでしまったということを関係者から聞いた。この大型スロ専はここ数年、ずっと苦しい営業を続けていた。そして、ついに落ちてしまったわけだ。しかし、私はそのおっさんにも説明する。もし何かやっているとしても、玉を出なくする操作ではなく、玉を出すための操作だからと。しかし、おっさんは“パチンコ屋”が勝手にそんなことをするのが許せないという。いわゆる“不公平感”である。おっさんにとって、パチンコの機械は神聖である。その機械に、調整以外で“パチンコ屋”の恣意的な思惑が加えられることを極度に嫌悪しているのだ。このホールに対する顧客の“不信感”を、どのように払拭していったらいいのだろう。

 パチンコホールの命は、稼働である。つまり、お客さんがたくさん来てくれることだ。そのために、等価・高価営業も始めたし、低貸営業も展開してきた。それはより多くのお客さんを呼ぶための手段であった。しかし、各ホールには近隣にライバルホールがある。そのホールに客を取られたくない。だから、さらに客を呼ぶための手段をあれこれ考える。

 そして、おっさんの言うように「電波を飛ばす」ホールも出てくる。その結果、ホール全体が不法行為を行っているような誤解を招く。確かに稼働を上げることは、ホールが生き延びるための重要なテーマだ。しかし、顧客にホールに来てもらうために考えた戦略が、顧客の“不信感”を招き、それがホールの命取りになって、そのホールは顧客から見捨てられる。

 このように直接にパチンコファンの声を聞くと、ホールに対する“不信感”が意外と根強いことを痛感する。負けた顧客の恨みだけでは、片付けられないものがある。さらに、その“不信感”はますます強まっていると感じる。だから、遊技人口は半分に減ってしまったのだろう。その原因を機械代の高騰や、行政の規則改正にを求める議論もこれまでたくさんあった。しかし、本当にそうなのだろうかと近頃、思うようになった。そして、この堂々めぐりの起点は、直に顧客と接するホールのこうした姿勢にあるのではないかという結論に近付きつつある。

写真キャプション=余暇進の展示会で新商品を披露する各社のブース


 私がこの業界に入ったのは、96年6月ですでに13年になる。当時は社会的不適合機の撤去騒動の渦中にあった。それまでは、京都の出版社で本を作っていた。たえず物事は動き、そのなかで流行や新たなビジネスモデルが生み出される。しかし、パチンコ業界のこの13年の動きを見ると、私には“堂々めぐり”にしか感じられなくなり、正直言って脱力感に陥ってしまう。何か“成長”や“改革”や“前進”があったのだろうか。この業界の根本は全然、変わっていないように思えてならない。

 一方、私自身で言うと、現在パチンコの仕事は以前より減って、他業界に関わることの方が多くなっている。その視点で見ると、パチンコは商売として、絶対おかしいと思うようになった。たとえば、ここにパチンコ台という1つの商品がある。これを顧客にいくらで提供するのか。他の商品であれば、卸値1万円のものを3万円では売れない。買う人がいないからだ。それを3万円で売ろうとすれば、強靭なブランド力やその物に対する3万円分の信用が必要になる。

 しかし、パチンコ台は遊技者に対し、いくらの値付けもできるし、思うような粗利もとれる。客がその台の前に座り、打ってくれることが前提である。さらに、その客にまた来てもらわなくてはならない。そのために、ホールは様々な営業戦略を展開する。しかし、遊技者に与えられている情報は、その台のスペックくらいのものだ。399回まわせば1回あたる。320回まわせば当たるはずだ。しかし、3回で当たる可能性もあれば、500回まわしても当たらない可能性もある。客はその“可能性”に運命を託して台の前に座り、真剣にリール動きを追う。大きな金額を失う可能性もあるし、大きな金額を獲得できる可能性もある。これは、まさしくギャンブルであるとしか言いようがない。

 パチンコをギャンブルではないと思っている人は少ないだろう。ファンは金を賭けて、“可能性”に挑戦している。しかし、パチンコホールは釘調整や設定によって、機械の性能を変更することができる。昔、ホールが営業の鉄則としていたのは、顧客に対して“生かさず殺さず”の方針であった。具体的に言うと、1ヵ月の使える額をホールに放出してもらい、さらに来月もまたパチンコを打とうという“戦意”を失わせないことである。

 そのためには、勝つ経験も味あわせなくてはならない。その勝ち率もホールに委ねられている。客を呼び込んでその台を打たせることがホールの仕事で、座った客を生かすも殺すもホール次第である。顧客はパチンコをするかしないか。どのホールで打つか。どの台で打つかという選択肢しかない。その特権を利用して、ホールはこれまで何人の客を殺してきたのだろうか。

写真キャプション=「未来型パチンコ・パチスロ産業をめざして」をテーマに開催された余暇進のセミナー


 長い目で見れば、客をいじめるホールはその報復を客から受ける。そんなホールに、客は行かなくなるからだ。その結果が、3000万人もあった遊技人口が1580万人に半減し、1万8000軒あったホールが1万2000軒になって6000軒が潰れたという数字に現れている。いま“客を殺す”という言葉を比喩的に使っているが、実際にパチンコが原因で死に追いやられた人も少なくない。実際、あるホールチェーンが新店を出したことでの出店地の地名を憶えると、数年後にその地で犯罪や自殺が起こることがこれまで何回もあった。それはそのホールチェーンが直接の原因ではなく、その出店によって激烈な集客戦が展開された結果だろう。

 つまり、ホールは顧客の“生殺与奪”のキャスティングボードを握っている。先の言葉を借りれば、“客を生かすも殺すもホール次第”ということになる。この重要な役割をホールは担っている。しかしそんな重要な役割を、なぜパチンコホールのオーナーに任せているのだろうか。なかには、自己本位で顧客のことを考えないホールもある。そんなホールには行かなければいいし、パチンコなんか打たなければいいという人もいる。長い目で見れば、そんなホールは“自然淘汰”されることも確かだろう。しかし、私が酒を飲まなければ生きていけないように、パチンコをしなければ生きていけない人もいる。また、長い目で見ればと言うが、その間にパチンコに見切りをつけた人やパチンコに殺された(比喩的に)人が何と多いことか。

 パチンコホールも自らが追い詰められれば、客にその苦しみを転嫁し、法外な利益を抜いて生き延びようとする。誰しも自分が一番かわいい。業界全体が苦しくなると、最も川下にいるホールに皺寄せが及び、ホールが直接的に客に手を下す。そんなホールが多くなると、パチンコに対する“不信感”が募ってくる。しかし、パチンコの営業や業界の改革を支えてくれるのは、誰でもないパチンコファンである。そのファンは現在、ホールをどのように思っているのか。いいホールもあり、悪いホールもあるだろう。しかしホール全体に対して、どれくらいのファンが信頼感を持ってくれているのか。これでは業界改革どころの話ではない。

 “民意”に背き、“民意”を裏切った業界は生き残れないし、顧客の期待や信頼を裏切った店舗は生き残れない。ましてや低貸で顧客の期待を膨らませ、その上での背信となれば、憎しみは倍化する。金儲けも確かに必要だろう。しかし、パチンコホールとしてのプライドと自分の顧客に対する責任をなくして、ホールの営業は成立しないのではないか。“業界の地位向上”という言葉を以前はよく聞いた。それを達成するためには、まず最も身近にいる自店の顧客から信用されなければならない。結局、ここから始めなければ、“堂々めぐり”からいつまで経っても抜け出せないと思うようになった。

 ファンから信頼を得て、ブランドを打ち立てたホールチェーンもある。しかしその一方で、ますます苦しくなってくる状況のもと、ファンへの裏切り行為もよく耳にするようになった。ここが踏ん張りどころだろう。“言うは易し、行なうは難し”で、この道は実に厳しい。しかし、その苦しみに耐えて、顧客の信頼を得るホールが“本物”になっていくような気がする。今日は(今日“も”だという声が聞こえる)飲みながら書いているので、回りくどくなってしまった。みんなが分かりきっていることを、だらだら書いたことに恥ずかしさを感じながら、今回はこれにて終了としたい。(佐渡屋太郎)


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